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牛皮 部位

【牛革】 革になる部位とは?部位ごとの違いもご紹介!

前回に引き続き、革の主役である『牛革』にスポットライトを当てていきたいと思います!

突然ですが、わたしたち人間の皮膚って部位によって厚みや伸び具合って全然違いますよね。

手や足の指の皮膚はちょっと引っ張るだけでも痛いものですが、お腹の皮膚は少々強く引っ張ってもよく伸びるのでそんなに痛くありません。
(お腹がスリムな人は別ですが・・・)

そして、もちろんそれは牛の皮も同じです。

そのため、牛革は、牛の生育年数や雌雄、そして体のどの部位を使うのかによっても、革の風合いや性質が大きく違ってきます。

では、そもそも牛革になるのは、牛の皮のどの部分なのでしょうか?

今回は牛の皮の構造や、部位ごとの違いについて見ていきたいと思います。
 
 

牛の皮の構造ってどんなもの?

 
牛を含め、動物の皮は外部の刺激から体を守るためにとても複雑な構造をしています。

そのほとんどはコラーゲン繊維で出来ています。
まずは次の図をご覧ください。
 
 
牛皮 皮膚構造
 
図のように牛の皮は、外側から、表皮(ひょうひ)層真皮(しんぴ)層皮下(ひか)層の三層で構成されています。

そのうち、表皮層と皮下層は、なめし前の水漬けや石灰漬けの工程で除去されるため、革になるのは、実は真皮層のみです。

革になる真皮層をさらに詳しく見ていくと、乳頭層(銀面層)網状層の二つの層でできていることがわかります。

乳頭層は、細かい繊維が密集している層のことで、革になったときに使われる「銀面(ぎんめん)」という言葉は、乳頭層の表面を指します。

それに対し、網状層はまとまった太い繊維が緩やかに交差している層で、「床面(とこめん)」は、網上層の肉面側のことを指します。

牛の皮はこの二つの繊維層で出来ていて、その繊維の密度は体の部位によって異なってくるのです。

では、次にそれぞれの部位ごとの特徴について見ていきましょう。
 
 

牛の部位によって異なる繊維の密度と特徴

 
一頭の牛であっても、繊維の方向や絡まり具合によって、出来上がる革の伸縮性や強度は変わってきます。

そのため、牛の皮は肩の部分をショルダー、背中から腰の部分をベンズ、などと呼ぶことで、部位ごとに区別されています。

それぞれの部位の特徴には、次のようなものがあります。
 
 

ショルダー(Shoulder)

 
牛皮 ショルダー
 
肩の部分。
頻繁に動かしていた部位のため、しわは多いですが、太さの揃った繊維束が均一に交差しており、その間に細かい繊維束が混ざっているため、繊維の密度は高くとても丈夫です。
靴の中敷や、しわなどの風合いを生かした製品に使用されることもあります。
 
 

ベンズ(Bends)

 
牛皮 ベンズ
 
背中から腰の部分。

繊維束の密度が高く、厚みもあり丈夫な部位です。
歪みや伸びなどに強いのも特徴です。
ある程度の長さが必要なベルトや、バッグのサイド部など大きな面積を必要とする製品に使用されます。
 
 

バット(Butt)

 
牛皮 バット

お尻の部分。

繊維束の密度が高く、充実している部位です。
しわも少なく、丈夫で厚みもあることから良質な素材とされています。
 
 

ベリー(Belly)

 
牛皮 ベリー
 
お腹の部分

繊維束の交差の度合いが低い部位です。
そのため他の部分と比べると薄く柔らかいですが、強度で劣ります。
その分、加工しやすいといった利点もあります。
鞄の内張りなど、負荷のかかりにくい部分に使用されることが多いです。
 
 

まとめ

 
今回は、牛革の部位ごとの特徴についてまとめてみましたが、いかがでしたか?

牛の革は部位によって用途の向き不向きもありますし、何より生き物の皮ですから、出来上がりも一枚一枚違います。

そのため、部位ごとの特徴を把握することは、上質な革を作り出すためにはとても大切なことになってきます。

こういった特徴や違いを見極めたうえで、お客様の求める革を作りあげていくことが、私たちタンナーの大事な役割の一つです。

牛革 原皮 種類

牛革が身近な革である理由とは?牛原皮の種類も紹介!

様々な原皮の種類がある中で、もっともポピュラーな革といえば、やはり牛革ですよね。

「本革=牛革」と言ってもいいくらいに、私たちにとって身近な革と言えるのではないでしょうか?

今回は、そんな牛革の原皮のことを取り上げてみたいと思います。
 
 

なぜ牛革は皮革素材の主流なのか?

 
古くから家畜として人間の生活に関わってきた牛ですが、皮革製品の主流となっているのには、どのような理由があるのでしょうか?

それにはまず、牛は世界中で多く飼育されていることから、牛の皮の供給量が安定していることが挙げられます。
加えて、牛一頭から採れる皮の面積が大きいこと、さらに牛の皮は皮膚線維組織が比較的均一で丈夫なことも大きな要因です。

牛革は、柔らかい子牛革や、成牛の頑丈な革など、生育年数や雌雄などによっても様々な性質の革を作ることができます。
そのため、使用用途も幅広いのですね。

では、次に牛革を作るための原皮について見ていきましょう。
 
 

原皮はどこからやってくる?

 
原皮の約8割は、北米、オーストラリア、ヨーロッパ、東南アジアなどから輸入されています。
もちろん国産の原皮もあります。

国内で生産される原皮は地生(じなま)と言われ、和牛ホルスタイン種が主です。

和牛は一毛(ひとけ)と呼ばれ、これは毛色が一色(黒毛、褐色)のため。
ホルスタイン種は白と黒のぶちでおなじみの牛です。

一言で牛と言っても、品種も様々ですし、海外と日本ではその飼育方法も異なります。
日々原皮と触れ合う中で、海外産の原皮は国内産のものと比べて、革の表面となる銀層が厚く、繊維密度も高めだと感じています。

国内産でも、和牛は比較的銀層が厚く、海外産のような繊維密度をしています。

分厚く固い革を作りたいのであれば海外産の原皮を使用する、といったように、求められる革の特徴に応じて最適な原皮を選ぶのも、タンナーの役割の一つです。

それでは、最後に牛原皮の種類についてご紹介します。
 
 

牛原皮の種類

 
原皮の意味や種類とは?」の記事でもご紹介しましたが、牛原皮は、25ポンド以上ある厚くて重い皮のことをハイド、子牛皮などの薄く手軽い皮をスキンと呼んで区別します。

牛革は、牛の生育年数などによって出来上がる革に特徴があることから、さらに細かく分類されます。

ここでは、それぞれの特徴と主な用途を見ていきましょう。
 
 

カーフスキン(Calf skin)

 
カーフスキン

 
生後6ヶ月くらいまでの子牛の皮。
 

特徴

 
人間の肌と同様で、成牛に比べるとしなやかで、柔らかいのが特徴です。
もともとの傷も少なく、牛革の中でも最も高品質な素材とされています。
銀面は薄く、非常にデリケート。
1頭から採れる面積も小さく、まさに高級素材と呼べる革です。
 

主な用途

 
鞄、革小物など
 
 

キップスキン(Kip skin)

 
キップスキン

 
生後6ヶ月〜2年以内の中牛の皮。
 

特徴

 
カーフスキンよりも繊維の密度が高いため、薄いですが丈夫です。
成牛に比べると銀面はなめらかで柔らかく、牛革の中ではカーフに次いで高級素材とされています。

高級ブランドの革製品用いられることも多いです。
 
 

主な用途

 
鞄、靴、小物類
 
 

カウハイド(Cow hide)

 
カウハイド

 
生後2年程度の出産を経験した成牛の雌の皮。
 

特徴

 
雌牛の皮のため、厚さは雄牛ほどではなく、やや柔らかいです。
カーフスキン、キップスキンと比べると厚みがあり丈夫と言えます。
幅広い用途で使用されている、ポピュラーな素材と言えるでしょう。
 

主な用途

 
鞄、靴、衣類、小物類
 
 

ステアハイド(Steer hide)

 
ステアハイド

 
生後2年程度で、生後3~6ヶ月の間に去勢された雄の成牛の皮。
 

特徴

 
去勢されて育つため、傷などが少ないです。
カーフやキップには劣るものの、銀面はきめ細やか。
厚みが均等で丈夫なため、様々な用途に使用されます。

牛革の代表的な素材』と言われ、私たちがよく目にする「本革」と表記されているもののほとんどが、
このステアハイドとも言われています。
 

主な用途

 
鞄、靴、衣類、小物類
 
 

ブルハイド(Bull hide)

 
ブルハイド

 
生後3年以上経過した、去勢されていない繁殖用の雄の皮。
 

特徴

 
牛革の中で最も固く、厚みもあり丈夫ですが、きめは荒く、柔らかさはありません。
去勢されずに育つため、傷なども多く見られることから、その用途は限られてきます
 

主な用途

 
靴底、工業用素材
 
 

まとめ

 
今回は、もっとも身近な皮革素材である牛革にスポットライトを当ててご紹介しました。

原皮の安定した供給量はもちろんのこと、
高級品から汎用品まで、様々な用途に合わせた革質を表現できることも、牛革が身近になっている理由と言えるでしょう。

もし今度牛革の製品を手に取る時は、どんな種類の牛革を使っているのか意識してみると面白いかもしれませんよ。

このブログでは今後も牛革の魅力について取り上げていく予定ですので、お楽しみに。
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。

革 仕上げ

製革の最終工程『仕上げ』とは?

今回は製革の最後に行う大事な工程、『仕上げ』についてご紹介したいと思います。

この工程を経て、私たちが普段目にするになるわけですが、そもそも革の仕上げとは一体どんなものなのでしょうか?

今回は、仕上げの基礎知識、そして代表的な仕上げの種類についてお話します!
 
 

革の仕上げとは?

 
革の仕上げとは、染色や加脂(かし)、表面の加工といった作業を行うことで、革に様々な色や表情、艶(ツヤ)等を出していくことを言います。

仕上げは、女性のお化粧に例えるとイメージしやすいかもしれません。

仕上げを行う前の革は、いわば、お化粧をしていないスッピンの状態です。

肌の状態や、TPOによってお化粧の程度が変わるように、革の状態や使用する用途によっても仕上げの方法は大きく異なってきます。

『耐久性や防水性を備えた実用的な革』や、『美しい光沢や表情を持つ手触りの良い革』など、求められる品質の数だけ仕上げの方法は存在する、と言えるでしょう。

仕上げを行ううえで大切な点を挙げるとすれば、革本来が持つ良さをいかに引き出すかということです。

お化粧が濃くなればなるほど、元の素肌の状態を隠してしまいますよね。
仕上げも方法によっては、革そのものが持つ質感や風合いを損ねてしまう場合もあるんです。

革という素材が秘める可能性を最大限に引き出して、求められる品質を満たす

ここが仕上げの難しいところでもあり、私たちタンナーの腕の見せ所でもあります。

それでは、仕上げの基本的な部分をお話したところで、次に仕上げの種類について見ていきましょう!
 
 

代表的な仕上げの種類一覧

 
革 仕上げ 種類
 
仕上げには、塗装剤や仕上げ剤を使用する方法機械的処理を施す方法などがあります。

通常では、革を使用する用途にあわせて、いくつかの方法を組み合わせるのが一般的です。

ここでは、代表的な仕上げ方法をご紹介しますね。
 
 

塗膜の透明度による分類

 
※塗膜(とまく)とは塗料によって形成された皮膜のことです。
 

素上げ

 
なめした革の銀面に着色剤や仕上げ剤をほとんど使わない方法。
お化粧で言えば、ほぼすっぴんの状態。革の持つ表情や質感を生かす仕上げ方法です。
使い込むことで色や艶が深まり、経年変化を楽しめます。
 
 

アニリン仕上げ

 
アニリン染料を革の銀面に染み込ませる方法。
透明感のある塗膜のため、革の表情がはっきり分かります。
通常、キズなどの少ない高級革に使用します。
 
 

セミアニリン仕上げ

 
顔料とアニリン染料の両方を使用する方法。
少量の顔料でキズなどを隠した後、アニリン染料を塗布するなどして仕上げます。
アニリン仕上げに近い雰囲気を持った革に仕上がります。
 
 

顔料仕上げ

 
革の銀面に顔料を塗布する方法。
比較的厚い塗膜のため、革のキズやしわを隠すことができ、均一的な表情に仕上がります。
素上げ、アニリン仕上げに比べると革らしい質感は損なわれます。
 
 

仕上げ剤による分類

 

カゼイン仕上げ

 
カゼインというタンパク質にワックスや染料などを混ぜたカゼイン仕上げ剤を使用する方法。カーフなどの銀面の美しさを生かすことができる仕上げ方法です。
 
 

ラッカー仕上げ

 
ニトロセルロース(硝化綿)を原料とするラッカー仕上げ剤を使用する方法。
非常に薄い塗膜で、高い光沢と耐水性を備えた革に仕上がります。
 
 

機械的な処理による分類

 

グレージング仕上げ

 
ガラスやメノウを使用して革を磨き、光沢を出す方法。
通常、カゼインやワックスなどを塗布した後に磨きます。
滑らかな質感と上品な光沢を持つ革に仕上がります。
 
 

アイロン仕上げ

 
アイロンを使用する方法。
塗装液を塗布した後、アイロンの熱と圧力を加えることで、革の表面に艶と滑らかさを与えることができます。
 
 

型押し仕上げ

 
凹凸を刻んだ金属板に革を押し当て、アイロンで熱と圧力を与えて型をつける方法。
キズやしわなどの欠点を隠す際にも使用されます。
 
 

まとめ

 
いかがでしたか?

今回は、製革の最終工程である「仕上げ」の基礎知識を中心にご紹介しました。

なお、先ほどもお伝えした通り、仕上げの方法は求められる品質の数だけ存在します。
今回ご紹介しきれなかった部分についても、今後取り上げていく予定ですので、どうぞお楽しみに!

鞣し なめし

鞣(なめ)しの意味や役割は?代表的な鞣しの種類も紹介。

革を柔らかくすると書いて鞣(なめし)という漢字になるように、皮が革に生まれ変わるには、これからお話する「なめし」の工程が必要不可欠です。

肉厚で耐久性に優れた革、しなやかで手触りが良い革、発色のよい革など、求める性質によってなめし方は変わってきます。

今回は、製革において重要な工程である鞣しについて、その基本的な知識や代表的な種類をご紹介します。

それでは、早速見ていきましょう。
 
 

鞣しとは?

 
鞣(なめ)しとは、「皮」のコラーゲン繊維と「なめし剤」を結合させることによって、安定した 素材へと変化させることです。
なめすことによって、「皮」は、耐熱性を備え、腐りにくく、柔らかくしなやかな「革」へと生まれ変わります。

現在主流となっているのは、フルタンニンなめしクロムなめしヘビーレタンなめしの3種類のなめし方です。

それぞれの特徴は以下でご紹介しますが、なめし方が違うということは、その手順や方法、使うなめし剤の種類も異なるということになります。

そして、このなめしの方法は、人間の生活の変化に伴い、これまでにも様々な進化を遂げてきました。

そこで、次に少しだけ、なめしの歴史をたどってみたいと思います。
 
 

歴史に見る鞣し

 
皮革の歴史は古く、今から200万年前の旧石器時代に遡(さかのぼ)ります。

当時の人たちは、寒さや衝撃から身を守るため、狩猟で得た動物の皮を剝(は)いで利用していたそうです。

はじめの頃は、乾燥させた固い皮を、もんだり、叩いたりして柔らかくしていただけでしたが、それではすぐに皮は腐ってしまい、使えなくなってしまいます。
さらに、ただ固いだけの皮は使い勝手も悪く、とても防寒具以外の用途に使えるような代物ではありません。

そこで、皮をもっと腐りにくく、色々な目的で使えるようにするために、先人たちは様々な知恵を絞りました。

そうして、生まれたものが魚や動物の脂に漬ける油を塗り込む油なめしや、皮に植物を燃やした煙にあてる燻煙(くんえん)なめし、草木の樹皮などに漬ける植物タンニンなめしなど、様々ななめし技術です。

中でも、植物タンニンなめしは、現代においても主流のなめし方の一つとなっています。

他にも、日本古来の伝統的な皮革としては、牛皮を塩と菜種油でなめした姫路白なめし革や、鹿皮を加工した甲州印伝革なども挙げられます。


このように、革は古くから人間の生活に欠かせないものであったことが分かります。

次にご紹介する3つのなめし方法も、そんな様々な試行錯誤の中から生み出されたもの、と言えるでしょう。
 
 

代表的な3種類のなめし方

 

それでは最後に、現在主流となっている3種類のなめし方についてご説明します。

 

フルタンニンなめし(通称:フルタン)

鞣し ドラム製法

※ドラム製法では写真のようなドラムを使用して鞣します。

 
植物から抽出されたタンニン成分(渋)をなめし剤として使用する、古くからある伝統的ななめし方法です。
皮の中心までタンニンを浸透させるため、濃度の違うタンニン液に順に漬けこむ必要があります。

大きな水槽に濃度の違うタンニン液を用意して順に漬けこんでいくピット製法、そしてドラムを使用するドラム製法の2つの製法がありますが、現在はドラム製法が主流です。

全部で30以上の工程があり、なめすのに数か月かかることもあります。
 
 

特徴

 
堅く、丈夫な革が出来上がります。染色しやすく、吸湿性に富みます。
成形性に富み、使い込むほどに馴染み、艶がでます。
 
 

利点

 
植物性のなめし剤を使用するため、製造過程で有害物質がほとんどでません。
特にヌメ革は、廃棄されても地中で微生物等に分解されるため、環境に優しい素材として近年注目されています。
 
 

主に使用されている製品

 
靴底や中敷きの皮、紳士用鞄、財布など。
 
 

クロムなめし

クロムなめし

※クロムなめしを施した原皮。クロム塩の青色をしていることから、『ウェットブルー』と呼ばれます。

 
塩基性硫酸クロム塩という化学薬品をなめし剤として使用します。
通常、タイコと呼ばれる大きなドラムの中に皮とクロム剤を入れてまわします。
世界中の革の約80%はクロムなめしと言われています。

 

特徴

 
耐熱性や柔軟性、伸縮性に富み、発色も良いです。経年変化は控えめ。
 
 

利点

 
フルタンニンなめしと比べると、なめし時間が短いために大量生産しやすく、費用も抑えることができます。
色々な加工を施しやすいといったメリットがあります。
 
 

主に使用されている製品

 

野球グローブ 素上げ革

 
野球グローブ、靴や鞄、洋服、車のシート、ソファなどのインテリア用品など。
 
 

ヘビーレタンなめし

 
コンビネーションなめし複合なめしとも言われ、複数のなめし剤を使用します。
例えば、クロムなめしをした後に、再度タンニンでなめすなどの工程を踏みます。
なめし剤の比率によって出来上がる革の性質は様々ですが、双方の良い所をあわせた革を作ることができます。
 
 

特徴

 
クロムなめし革の丈夫さやしなやかさと、フルタンニンなめし革の経年変化しやすい性質を兼ね備えた革など、単独のなめし剤では得られない性質の革を作ることができます。
 
 

利点

 
クロムなめしと同等程度のコストで作ることができます。
必要とされる革の性質や目的にあわせて複数のなめし剤を組み合わせます。
さまざまな性質や特徴をもった革を作り出すことができます。
 
 

主に使用されている製品

 

コンビなめし

 
鞄や衣類などの服飾用品など
 
 

まとめ

 
今回は、「なめし」についてご紹介しました。
なめし方によってかかる費用や時間も変わったり、何より、出来あがる革の性質が変わることがなめしの奥深いところです。

なめしには、使う動物の種類や原皮の良し悪しに加え、タンナーの知識や経験といった技術的な面も重要です。
原皮の特徴や、革に求める要素にあわせて、最適ななめし方法を選択することで、良い状態で長く使い続けられる革を作り出すことができるのです。
 
 

原皮 意味 種類

原皮の意味や種類とは?

財布や鞄、靴、家具、スポーツ用品など、『革』は生活の中でさまざまな用途に使われています。

柔らかく手触りの良いものから、分厚く丈夫なもの、摩擦に強いものなど、動物の種類や雌雄、年齢などによって出来上がる革の種類も多岐にわたります。

革を育てる、という言葉があるように、経年変化によって表情が変わっていくのも、革製品の魅力の一つですよね。

では、さまざまな製品として使われている革は、一体どのような工程を経て作られているのでしょうか?

今回は、製革の基本となる「原皮(げんぴ)」についてご紹介します。
 
 

原皮とは?

 
動物の皮は、肉と同様に、放っておくと腐ってしまいます。
そのため、剥いだ後の皮に付いている肉や脂肪を取り除き、塩漬けにしたり、乾燥したりして腐らないようにして保管します。

これらの防腐処理が施された皮を「原皮(げんぴ)」と呼びます

原皮は、その重さによってさらに二種類に分類されます。

成牛皮や馬皮など25ポンド以上の厚みがあり、大きく重たい皮をハイド(hide)と呼び、子牛皮や羊皮などの薄くて軽い皮をスキン(skin)と呼んで区別します。
 
 

ハイドについて

 
ハイドは、成長した牛や馬の皮ですので、一頭あたりから採れる面積は大きいです。
そのため、革ジャンなどの衣類や、ソファなど面積が大きいものを作る際に重宝されます。

代表的なものが、「ステアハイド」という生後2年以上経った、去勢済みの雄牛の革です。
牛革・本革といった表記の品物のほとんどが、このステアハイドで作られています。
 
 

スキンについて

 
スキンは、子牛や豚、羊など比較的小さな動物の皮ですので、一頭あたりから採れる面積は小さいです。
薄くて軽く、柔らかいものが多いですが、価格が高いため、高級品によく使用されています。
ハイブランドの財布は、カーフスキンという生後6か月までの子牛の皮で作られていることが多いです。


 
 

ここまでが、原皮の基本的な意味についてです。

次に、皮と革の違いについて見ていきましょう。
 
 

皮と革はどう違う?

 
皮と革の違い
 
「皮」と『革』。
その違いは簡単に言ってしまえば、次の通りです。

・動物の体から剥がしたそのままの状態のもの → 「皮」

・皮を加工して製品に使える状態にしたもの → 『革』

先に書きましたが、皮に防腐処理を施したものが原皮です。
原皮は、動物の血液や体毛が付いたままの状態のため、このままでは当然製品には使えません。

原皮から余分な物を取り除き、柔らかくして製品に加工しやすくするのが、「なめし」という工程です。

このなめしの工程を経て「皮」は、『革』へと生まれ変わります。

そしてこの変化の工程を担うのが、私たちタンナーの役目です。

それでは、最後に主な原皮の種類に一覧についてもご紹介しますね。
 
 

主な原皮の種類一覧

 

牛(カウ、Cow)

 
牛皮
 
皮革製品の中で最もポピュラーなもの。
生育年数や性別、部位によって、繊維が細かく柔らかいものから、繊維が粗く、肉厚で硬いものまで、さまざまな風合いの皮があります。見た目も美しく丈夫です。

代表的なものは、先ほどご紹介したステアハイドが挙げられます。
鞄、靴、ベルト、財布、衣類、その他幅広い用途に使用されています。
 
 

水牛(バッファロー、Water Buffalo)

 
水牛皮
 
牛革に比べて繊維組織のきめが粗く、肉厚なのにしなやかで加工しやすいのが特徴です。
鞄、ベルト、財布などに使用されています。
 
 

馬(ホース、Horse)

 
馬皮
 
牛革に比べて厚みはなく強度は劣りますが、その分柔軟性があります。
特に、農耕馬の臀部(でんぶ)から採れる革はコードバンと呼ばれ、繊維が緻密で硬く、美しい光沢を放ちます。

生産量が限られていため、高価なことも特徴です。
靴、鞄、ベルト、財布などに使用されます。
 
 

羊(シープ、Sheep)

 
羊皮
 
通常の毛皮とは違い、毛を内側に向けて使用するのが特徴です。
薄くて柔らかく、キメが細かい皮を持ちますが、繊維が荒いため、強度を必要とする皮革製品には不向きです。

特に、生後1年以内の仔羊の革はラムスキンと呼ばれ、高級品に分類されます。
また、毛足を残したまま加工されたものは、ムートンと呼ばれ、コートやブーツなどに使用されています。
その他にも、鞄、衣類、手袋、帽子などに使用されます。
 
 

豚(ピッグ、Pig)

 
豚皮
 
摩擦に強く、通気性も良いことが特徴です。
そのため、靴の中敷きなどにも用いられます。
その他、鞄、ベルト、衣類、財布などにも使用されています。
 
 

まとめ

 
今回は、製革の第一歩となる原皮について、そして「皮」と『革』の違いについてもご紹介しました。

原皮にもさまざまな種類のものがありますので、今度革製品を見る時にはぜひチェックしてみてくださいね。

なお、革製品は、何を作るのか、どのような用途に使用するのかによって、原皮の選び方、そして”なめし方”も違ってきます。

次回は、原皮の状態から、「皮」が『革』に生まれ変わるまでの、「なめし」の工程について詳しくご紹介したいと思います。

それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。