製革の最終工程『仕上げ』とは?
2017.09.22
今回は製革の最後に行う大事な工程、『仕上げ』についてご紹介したいと思います。
この工程を経て、私たちが普段目にするになるわけですが、そもそも革の仕上げとは一体どんなものなのでしょうか?
今回は、仕上げの基礎知識、そして代表的な仕上げの種類についてお話します!
革の仕上げとは?
革の仕上げとは、染色や加脂(かし)、表面の加工といった作業を行うことで、革に様々な色や表情、艶(ツヤ)等を出していくことを言います。
仕上げは、女性のお化粧に例えるとイメージしやすいかもしれません。
仕上げを行う前の革は、いわば、お化粧をしていないスッピンの状態です。
肌の状態や、TPOによってお化粧の程度が変わるように、革の状態や使用する用途によっても仕上げの方法は大きく異なってきます。
『耐久性や防水性を備えた実用的な革』や、『美しい光沢や表情を持つ手触りの良い革』など、求められる品質の数だけ仕上げの方法は存在する、と言えるでしょう。
仕上げを行ううえで大切な点を挙げるとすれば、革本来が持つ良さをいかに引き出すかということです。
お化粧が濃くなればなるほど、元の素肌の状態を隠してしまいますよね。
仕上げも方法によっては、革そのものが持つ質感や風合いを損ねてしまう場合もあるんです。
『革という素材が秘める可能性を最大限に引き出して、求められる品質を満たす』
ここが仕上げの難しいところでもあり、私たちタンナーの腕の見せ所でもあります。
それでは、仕上げの基本的な部分をお話したところで、次に仕上げの種類について見ていきましょう!
代表的な仕上げの種類一覧
仕上げには、塗装剤や仕上げ剤を使用する方法、機械的処理を施す方法などがあります。
通常では、革を使用する用途にあわせて、いくつかの方法を組み合わせるのが一般的です。
ここでは、代表的な仕上げ方法をご紹介しますね。
塗膜の透明度による分類
※塗膜(とまく)とは塗料によって形成された皮膜のことです。
素上げ
なめした革の銀面に着色剤や仕上げ剤をほとんど使わない方法。
お化粧で言えば、ほぼすっぴんの状態。革の持つ表情や質感を生かす仕上げ方法です。
使い込むことで色や艶が深まり、経年変化を楽しめます。
アニリン仕上げ
アニリン染料を革の銀面に染み込ませる方法。
透明感のある塗膜のため、革の表情がはっきり分かります。
通常、キズなどの少ない高級革に使用します。
セミアニリン仕上げ
顔料とアニリン染料の両方を使用する方法。
少量の顔料でキズなどを隠した後、アニリン染料を塗布するなどして仕上げます。
アニリン仕上げに近い雰囲気を持った革に仕上がります。
顔料仕上げ
革の銀面に顔料を塗布する方法。
比較的厚い塗膜のため、革のキズやしわを隠すことができ、均一的な表情に仕上がります。
素上げ、アニリン仕上げに比べると革らしい質感は損なわれます。
仕上げ剤による分類
カゼイン仕上げ
カゼインというタンパク質にワックスや染料などを混ぜたカゼイン仕上げ剤を使用する方法。カーフなどの銀面の美しさを生かすことができる仕上げ方法です。
ラッカー仕上げ
ニトロセルロース(硝化綿)を原料とするラッカー仕上げ剤を使用する方法。
非常に薄い塗膜で、高い光沢と耐水性を備えた革に仕上がります。
機械的な処理による分類
グレージング仕上げ
ガラスやメノウを使用して革を磨き、光沢を出す方法。
通常、カゼインやワックスなどを塗布した後に磨きます。
滑らかな質感と上品な光沢を持つ革に仕上がります。
アイロン仕上げ
アイロンを使用する方法。
塗装液を塗布した後、アイロンの熱と圧力を加えることで、革の表面に艶と滑らかさを与えることができます。
型押し仕上げ
凹凸を刻んだ金属板に革を押し当て、アイロンで熱と圧力を与えて型をつける方法。
キズやしわなどの欠点を隠す際にも使用されます。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、製革の最終工程である「仕上げ」の基礎知識を中心にご紹介しました。
なお、先ほどもお伝えした通り、仕上げの方法は求められる品質の数だけ存在します。
今回ご紹介しきれなかった部分についても、今後取り上げていく予定ですので、どうぞお楽しみに!
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