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本革と合皮の違い

本革と合皮の違いとは?

本革と合皮、見た目はよく似ていますが、それぞれの特徴は違います。
今回は本革と合皮の違いについてご紹介したいと思います。まずは、素材の違いからみていきましょう。
 
 

本革とは?

 
本革(天然皮革)とは、動物の皮をなめして革にしたものを指します。

牛や馬、豚、羊などの定番のものから、ヘビやトカゲといったエキゾチックレザーまで幅広い種類があります。
動物の皮はそのままの状態だと腐ってしまいますので、なめしを施して腐りにくくし、見た目や手触りを良くします。
もともとが生きた動物の皮ですので、キズやシワ、毛穴などが残っています。
 
 

合皮とは?

PUレザー

 
合皮とは、布地の上にポリウレタンやポリ塩化ビニル等の樹脂を塗布し、表面を本革に似せた素材のことです。
表示では、「合成皮革」と記されます。

ポリウレタンを使用したものはPUレザー、ポリ塩化ビニルはPVCレザーと呼ばれます。
プラスチックやビニールと同じようなものと考えると分かりやすいですね。

耐水性に優れ、汚れが付きにくいのが特徴です。
 
 

本革と合皮の違い

 
本革と合皮はそもそもの素材が違いますので、その特徴も違います。

一番の違いは、「本革は経年変化し、合皮は経年劣化する」ということです。

それぞれの特徴を詳しくみていきましょう。
  
 

本革の特徴

  
本革は、天然の表情や質感を楽しめる素材です。
動物の皮を加工しているため、始めからキズやシワがあることもあります。

特にこういった天然の表情を生かした革は、経年変化(エイジング)しやすく、使い込むほどに手になじみ、革独特の美しい風合いへと変化していきます。

本革製品は、メンテナンス次第で10年ほど持ちます。

本革の弱点は水分。
吸湿性があるため、長時間手で触れていても汗でべたつくということはありません。
ですが、その分汗や雨などに濡れるとしみになってしまうことがあります。

また、保管の仕方が良くないとカビが生えてしまうこともあります。
そうならないためにも、通気性の良い場所に保管し、定期的にオイルやクリームを塗るなどしてメンテナンスする必要があります。

合皮に比べると本革は価格が高く、重量は重めです。
  
 

合皮の特徴 

 
一方で合皮は、安価で、同じ分量を使用していても本革より重量は軽めです。

見た目も本革と変わりませんが、質感などは違います。
プラスチックやビニールと同じ素材ですので、長時間手で触れていると汗でべたついてきます。
耐水性には優れていているため、雨でしみになるといったことはありません。

メンテナンスも本革に比べると簡単です。
汚れがついたら乾いた布や、薄めた洗剤に浸した布でふき取るだけです。
中には、ドライクリーニングできるものもあります。

合皮の寿命は約3年ほどです。
合皮によく使用されるポリウレタンは、合成された時点から劣化が始まっています。

空気中の水分と結合して加水分解されたり、紫外線や熱などの影響で徐々に分解され、劣化していきます。
表面がぬるぬるとした感じになったり、劣化が進むと表面がひび割れたり、ぼろぼろと剥がれて布地がむき出しの状態になったりします。

ここまでの内容を表にまとめてみましたので、こちらも参考にしてみてくださいね。

本革_合皮比較表

ここまで、本革と合皮、それぞれの特徴についてみてきました。
特に、本革は使ううちに色や風合いが深まっていくのに対して、合皮は徐々に劣化していく、というのが対照的です。
では最後に、本革と合皮の見分け方についてご紹介します。
 
 

本革と合皮の見分け方

 
最近の合皮はとても良く出来ていて、日々革に触れている私たちでも、一目見ただけでは本革と見分けがつかないものもあります。

本革と合皮を見分けるには、次の3点をチェックしてみることをおすすめします。
 
 

革の断面をみる

 
動物の皮は、太い繊維と細い繊維が複雑に絡まりあってできています。
そのため、断面を見ると、繊維質で毛羽立っています。

ベルトの穴やバッグの持ち手、内側などで断面をみてみましょう。
合皮の場合は、断面部分が厚い塗料でコーティングされていたり、布地が見えていることがあります。
 
 

革の表面をみる

 
本革は、もともと動物の皮膚。製革の工程で脱毛されますが、毛穴は残っています。
加工の仕方によっては毛穴が見えにくいものもあります。

一方、合皮は樹脂を加工したものですので、毛穴はありません。
 
 

革のすれた部分をみる

 
本革は染料や顔料で染めてあるため、すれた部分は色が落ちて、染色する前の色がでてきます。
合皮は、経年劣化してしまうため、すれるとひび割れたり剥がれたりして下の布地が見えます。
 
 

まとめ

 
今回は、本革と合皮の違いや見分け方についてご紹介しました。
使い始めは分からなくても、使い込むうちに徐々に違いがみえてきますね。

合皮は水分に強いため、雨の日や水場でも気にせず使うことが出来るというメリットがありますが、耐久性はあまりよくありません。
本革は値段も高く、メンテナンスや取り扱いに注意が必要ですが、長く使える分、愛着が湧く素材と言えるでしょう。

本革と合皮、それぞれにメリットデメリットがありますが、やはり私たちタンナーとしては、手間はかかっても長く使える本革製品をおすすめしたいところです。

革ができるまで 仕上げ

【革ができるまでの工程】革の仕上げ工程をさらに詳しく

なめしの工程を終えると、最終段階の仕上げの工程へと進みます。

仕上げとは、革に塗装や塗膜を施したり、着色したりして革の表面を保護すると同時に、見た目や風合いを高める作業。

簡単に言えば、「革に施すお化粧」のことです。
革に求められる品質によって仕上げの方法も違ってきます。

今回は、最後の仕上げに向かうまでの製革工程について、順番にご紹介したいと思います。
 
 

革ができるまでの工程: ⑬染色・加脂〜㉒アイロン・型押し

 

⑬染色・加脂

 
染色は、染料を使用して革に色を付けることです。

革と染料液をドラムの中に入れ、回転させて染色するドラム染色が一般的。
色調の調節(色合わせ)には技術力が必要とされています。

加脂は、油脂を加えて革を柔らかくすることです。
これによって光沢や耐水性を与えることができます。
 
 

⑭セッティング

 
セッティングマシンという機械を使って、染色・加脂を施した革の水分量を減らし、同時に革を伸ばして表面をなめらかにして形を整える作業です。

次の乾燥の工程に向けて、ここでしっかり水分を取り除くことが大切です。
 
 

⑮乾燥

 
革ができるまで 仕上げ
 
革の水分を取り除き、乾燥させます。
なめし剤や染料、加脂剤を革に定着させる目的もあります。

屋内や屋外の風通しの良い場所で自然乾燥させる方法の他に、真空乾燥機などの機械を使用する方法もあります。
 
 

⑯味取り

 
乾燥させた革の水分量を調節する作業です。
乾きすぎている部分に適当な水分を与え、次のステーキング作業で革を揉みほぐしやすい状態にします。
 
 

⑰ステーキング

 
乾燥することでこう着したコラーゲン線維をほぐし、革を柔らかくする作業です。
バイブレーションステーキングマシンやドラムを使用して空打ちすることで革を十分に揉み解します。
柔軟性や弾力性を与えることができます。
 
 

⑱ネット張り乾燥

 
革ができるまで ネット張り乾燥
 
ステーキングを施した革が収縮しないように、クリップを使ってネットに張り付け、平らな状態にして乾燥させます。
革をのばしてしわをとり、形を整える狙いもあります。
 
 

⑲銀むき

 
銀面にサンドペーパーをかけて薄く削る作業です。
ガラス張り革やヌバックなどを作る際に行います。

銀面のキズや汚れなどが除去されるほか、毛穴がつぶれるため、なめらかになります。
銀むきした革に残った革の粉塵は、ダストリムーバーを使って取り除きます。
 
 

⑳塗装

 
銀面に塗料を塗布する作業です。
スプレー塗装機や、ロールコーターなどに機械を用いて塗装をすることで、色を付けたり、艶をだしたりして外観を整えます。

また、革に耐久性を与えることもできます。
(この記事の始めにお伝えした「革のお化粧」ですね)

革の種類や状態によって、塗装方法は異なります。
 
 

㉑艶出し

 
革の表面を磨き、艶を出す作業です。
ポリッシングマシンやグレージングマシンなどの機械を使います。

機械の中には、ガラスやメノウなどの石やフェルトなどがセットされており、摩擦熱を加えることで上品な光沢を与えることができます。
 
 

㉒アイロン・型押し

 

アイロン

 
最後にアイロンがけを行うことで、革を伸ばすとともに表面に艶を出し、なめらかにすることができます。
また、塗膜を革に定着させる効果もあります。

プレスアイロンやロールアイロンといった機械を使用するほか、手アイロンで行うこともあります。
 

型押し

 
型押しは、模様を刻印した金属面を皮革の表面に押し当て、熱と圧力をかけることで革に型を付ける作業です。
オーダーに応じてさまざまな模様をつけます。
 
 

まとめ

 
今回は、染色から最後の仕上げまでの工程をみてきました。

この後、出来あがった革の色合いや品質を丁寧に検査します。
厚みや風合い、手触りなどもチェックした後、計量して出荷されていきます。これですべての製革工程が終了です。

原皮の状態から、なめし、染色、仕上げなど、動物の皮が革になるまでには、みなさんが想像した以上に細かく、たくさんの工程があったのではないでしょうか。

製革工程には、原皮の状態に加えて、気候や湿度などの条件も関ってくるため、同じものは一枚として出来上がりません。

良い状態で長く使い続けられる革を作るために、また、求められる色や風合いを表現するために、私たちタンナーは日々革と向き合っています。

革ができるまで なめし

【革ができるまでの工程】『なめし』〜『再なめし』まで

皮は、なめしの工程を経てようやく革に変化します。

製革の要とも言えるなめし工程。

現在主流となっているなめし方法は、フルタンニンなめし、クロムなめし、ヘビーレタンなめしの3種類ですが、それぞれ使用するなめし剤や方法が違ってきます。

ここでは、革ができるまでの工程のうち、『なめし』から、『再なめし』 に至るまでの流れを見ていきましょう。

※なめす前の工程についてはこちらの記事をご覧ください。
『【革ができるまでの工程】革をなめす前の下準備とは?』
 
 

革ができるまでの工程: ⑨原皮〜⑫なめし前

 

⑨なめし

 
なめしとは、皮のコラーゲン繊維になめし剤を結合させて、耐熱性、耐久性を備えた素材に変化させることです。

クロムなめしでは、塩基性硫酸クロム塩という薬品を使用します。

大きなドラムの中になめし剤と皮を入れて回転させ、皮になめし剤を浸透させます。
通常24時間以内になめし終えることができますが、皮の状態や気候などによって薬剤の濃度や回転時間などを調整する必要があります。

フルタンニンなめしでは、植物から抽出されたタンニン(渋)を使用します。

大きな水槽に濃度の違うタンニン液を用意し、順に漬け込んで浸透させるピット製法と、ドラムの中にタンニン液と皮を入れて回転させ、皮に強制的にタンニン液を浸透させるドラム製法があります。

なめしに必要なスペースや時間などの関係から、現在はドラム製法が主流です。

※なめしの詳しい内容についてはこちらの記事をご覧ください。
『鞣(なめ)しの意味や役割は?代表的な鞣しの種類も紹介。』
 
 

⑩水絞り・選別

 
なめし終えた革に残った余分な水分を搾り出します。

水分量を調整して、次のシェービング工程に備えます。
絞った後は、革の品質をチェックします。銀面の状態やキズなどの具合を見て革を等級に分けます。
 
 

⑪シェービング

 
革の肉面側を回転するロール刃で削って厚さを調整する工程です。
厚さは、製品革や次の再なめし工程後の仕上がりを予測して行います。

一定の厚さにするには職人ならではの技術力が必要とされます。
 
 

⑫再なめし

 
前のなめし工程とは別のなめし剤を使用して再びなめします。
使用用途に適した革を作り出すために必要な工程です。

衣料や靴、袋物用の革を作る際には、クロムなめし後の革に、合成のなめし剤や天然の植物性タンニン剤を使用して再度なめします。
こうすることで、革の用途に応じた特性を与えることができます。

このように異なる複数のなめし剤を使用するなめし方法を、ヘビーレタンなめし(コンビネーションなめし)といいます。
 
 

まとめ

 
なめしの方法は、革の用途や求められる性質によって変わります。

皮の状態を見極めて、なめし方法を決め、なめし剤の濃度や時間を調整して最適ななめしを施す。

出来あがる革の手触りや風合いに大きく影響する工程であるからこそ、なめしにはタンナーの確かな知識や技術力が必要不可欠となってくるのです。

革ができるまでの工程

【革ができるまでの工程】革をなめす前の下準備とは?

動物の皮は、なめしなどの様々な工程を経て革になります。

タンナーは、革の厚みや手触り、見た目など、求められる革の要素にあわせ、最適な方法を組み合わせて革を作りあげます。

それぞれのタンナーには得意な分野や独自の方法がありますが、大まかな製革工程はほぼ同じです。

今回は、革ができるまでの22の工程のうち、原皮の状態からなめし前までを順番にご紹介します。
 
 

革ができるまでの工程: ①原皮〜⑧なめし前

 

①原皮

 
革ができるまで 原皮
 
原皮は、主にアメリカやヨーロッパ、アジアなどから輸入されます。
もちろん、国内産のものもあります。
腐らないように塩漬けされた状態で入ってきます。
 
 

②水漬け・背割り

 
革ができるまで 水漬け
 

水漬け

 
塩漬けされた原皮には、動物の毛や血肉、汚物などが付着しています。
これらを洗い流して水分を補い、生皮の状態に戻します。
こうすることで、後の薬品処理の工程をスムーズに行うことができます。
 

背割り

 
牛や馬などの面積の大きな皮は、作業しやすいように一等分の皮を背筋に沿って半分に分けます。
この作業を「背割り」といいます。

背割りのタイミングはタンナーによって異なります。
 
 

③裏打ち

 
フレッシングマシン(裏打機)という専用の機械を使用して、皮の肉面(裏面)に付着している肉片や脂肪を削り取ります。
タンナーによっては、石灰漬けの後に行うこともあります。
 
 

④脱毛・石灰漬け

 
石灰漬けにして皮のコラーゲン繊維をほぐします。
石灰乳に浸漬して、残っている毛や脂肪、表皮層を分解除去します。
こうすることで、皮革独特の柔軟性を得ることができます。

この時、毛を抜き取った面が皮の表面となり、銀面と呼ばれます。
 
 

⑤分割

 
スプリッティングマシンという機械を使用して皮を銀面(表面)と床面(裏面)の2層に分割します(なめした後に分割することもあります)。
皮革の厚さを調整する作業でもあります。
銀面は、皮革製品に、床面は皮革製品の他に、工業用・医療用コラーゲン繊維として多方面に使用されます。
 
 

⑥再石灰漬け

 
ここて、④の工程と同じく再び石灰漬けを行います。
石灰乳に浸漬させ、アルカリの作用で皮のコラーゲン繊維の絡みをほぐします。

特に、ソフトな風合いの革やスエード調の革を作る際には、必要不可欠な工程です。
 
 

⑦脱灰・酵解

 

脱灰(だっかい)

 
脱毛、石灰漬け、再石灰漬けで皮の中に残った石灰を取り除く工程です。
石灰で強アルカリ性に傾いた皮を中和して、後のなめしの工程に備えます。
 

酵解(こうかい)

 
酵解は、ベーチングとも呼ばれています。
石灰漬けでも取り除けなかった毛穴やタンパク質分解物、脂肪などを、タンパク質分解酵素を使用して分解除去します。

こうすることで銀面がなめらかになります。
 
 

⑧浸酸

 
クロムなめしの場合、塩基性硫酸クロム塩という酸性の薬剤を使用します。
なめし作業の前に皮を酸性の溶液に浸漬することで、なめし剤を吸収しやすい状態にします。
 
 

まとめ

 
不要なものを取り除いて皮の繊維を解し、phを調整してなめし剤が浸透しやすい状態にする、ここまでがなめしの下準備ともいえる工程です。
こういった下処理や準備は、この後のなめし工程をスムーズに行うためだけでなく、出来上がりの革の品質にも関わる大切な作業です。

次は、製革の要ともいえる、なめし工程について詳しくご紹介します。
なめすことで、皮は腐りにくく柔軟で、耐熱性や耐水性を備えた革へと生まれ変わります。

素上げ革

『素上げ』革とは?その特徴や魅力をご紹介します!

今回は仕上げの記事でも少しご紹介した「素上げ」について、その特徴や魅力についてご紹介します。

素上げ革はナチュラルレザーとも呼ばれ、革本来の風合いを好む方に人気の革です。

では、素上げ革とは具体的にどのような革なのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
 
 

素上げ革とは?

 
素上げ革とは、染色した後の革に着色剤や仕上げ剤などの薬品をほとんど使用しないことで、革独特の表情を残したまま仕上げる革のことです。

製革の最終工程で行われる仕上げは、いわば革に施すお化粧のようなもの。

仕上げにはたくさんの種類がありますが、その中でも素上げは、限りなく革の「素」に近い状態に仕上げた革、だと言えます。
 
 

素上げ革の魅力

  素上げ革

 
素上げ革の魅力を一言で言うと、革のナチュラルな風合いや個性を楽しめるところです。

一般的な革は、着色剤や仕上げ剤を使用して革の色落ちを防いだり、表面のキズやシワを隠したりしています。

そうすることで革が長持ちするように感じるかもしれませんが、実は塗料や塗膜などで革の表面を覆ってしまうと、革本来が持つ自然な風合いは損なわれてしまいます。

その点、素上げ革は塗料などで覆われていない分、色落ちやシミになりやすいといったデメリットはあります。

ただし、そのおかげで使い込むほどに深まる色味や艶などのエイジング(経年変化)を楽しんだり、革本来の持つ表情や質感を感じることができるようになるのです。

では、素上げ革に見える”革の表情“とはどういったものがあるのでしょうか?
 
 

素上げの革に見える『革の表情』とは?

 
革は、もともとは動物の皮膚だったものを加工した天然素材です。
そのため、その動物の育ってきた環境や部位による特徴などが革の表情となってあらわれます。

革の表情の例としては次のようなものがあります。
 
 

バラキズ

本革 バラキズ

 
生前の怪我や虫刺されなどの傷跡です。
 

トラ

 
革の”シワ”。
首や肩、脇の下などの屈曲していた部位に多いです。
 

チスジ

 
皮膚の下を通る血管の跡がそのままあらわれたもの。
 

シボ

 
革を作る工程で揉んだり縮ませたりすることでできる、立体的なシワのことを指します。

 


シボのように革を作る工程でできるものを除けば、これらの特徴はすべてその動物が生きた証です。
一頭一頭違う動物の生きた証はそのまま革の個性になり、一枚として同じ革はできません。

これも、革という素材の魅力の一つと言えるでしょう。
 
 

上質な素上げ革が少ない理由

 
ここまで見てきたとおり、素上げ革は、革の「素」がみえてしまう分、素材の良し悪しがそのまま革の仕上がりに関わってきます。

一枚として同じ状態のものはないからこそ、安定した品質の素上げ革を作り出すことは難しくなります。

 

上質な素上げの革を生み出すためには、原皮の状態を見極め、一枚一枚に最適な素上げを施す確かな革職人の技術力が必要不可欠。

いわば、優れた『素材』と『技術』の両方が揃った時、初めて上質な素上げの革が生まれるのです。

 

ただし、革の風合いや見た目など、熟練の革職人の厳しい目をクリアできる革は、そう多くはないのが現状です。

そのことが、上質な素上げ革が希少になっている理由なのでしょう。
 
 

まとめ

 
今回は、素上げ革の特徴と魅力についてご紹介しました。

革は天然素材のため、一枚として同じものはありませんが、中でも素上げ革は、製法がシンプルなためごまかしがききません。

私たちも創業以来、素上げ革をメインに取り扱ってきた経験から、その大変さは身にしみて感じています。

良質な原皮の選択に始まり、なめす前の仕込み、なめし、染色、仕上げ、検品といったすべての工程で、革の状態に意識を集中させること。

そういった、革職人たちの地道で真摯な取り組みと熟練の技術があってこそ、自然な風合いやタッチ感、表情を楽しめる素上げ革が生まれるのです。