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革靴 加工 種類

革靴の革の種類と加工方法は?

今回は革靴に使われる革の種類とその加工方法についてご紹介します。

一言に革靴と言っても、どの場面で使用するのかによって、見た目や質感、耐久性など革に求められる機能はさまざまです。

長時間履く場合には、見た目よりも耐久性が、フォーマルな場面では、耐久性よりも見た目や質感の方が求められます。
そんな革靴には、何の革が使用されているのでしょうか?
 
 

革靴に使われる革の種類は?

 
バッグや財布と同じく、靴には様々な種類の革が使用されています。

ここでは、革靴の定番である牛革や馬革と、豚革、ワニ革を取り上げてそれぞれの特徴についてご紹介します。
まずは、牛革からみていきましょう。
 
 

牛革

 
皮革素材の代表格である牛革。

供給数が安定していることや、見た目が美しいことから、靴だけでなく幅広い製品に使用されています。表面がキメ細やかで、適度な厚みと耐久性があるのが特徴です。

牛革は、飼育年数や雌雄の違いによっていくつかの種類に分けられています。
革靴によく使用されるのは次の4種類です。
 
 

カーフスキン

 
生後6ヶ月程度の子牛から採れる皮です。
緻密な繊維構造を持ち、表面がなめらかで柔らかいのが特徴です。
牛革の中で最も上質かつ高級とされる素材です。
 
 

キップスキン

 
生後6ヶ月~2年以内の中牛から採れる皮です。
カーフよりも厚みがありながらも、表面はなめらかです。
 
 

カウハイド

 
生後2年程度の、出産を経験した雌牛の皮です。
ステアハイドと比べると薄く、表面は決め細やかです。
 
 

ステアハイド

 
生後2年程度で、生後3ヶ月~6ヶ月の間に虚勢された雄牛の皮です。
カーフやキップに比べると表面のキメ細やかさは劣りますが、その分厚みがあり丈夫です。牛革の中で最も使用されているのがこのステアハイドです。


牛革の中では、この4種類が革靴によく使用されます。

カーフスキン、キップスキンは高級靴のアッパー素材として使用されることが多いです。

最もポピュラーなステアハイドは耐久性に優れ、男性用ビジネスシューズを始め、様々な種類の靴に使用されており、革靴の定番素材と言えるでしょう。
 
 

馬革

 
牛革に次いで革靴に多く使用されているのが馬革です。

中でも高級とされるのが、農耕馬のお尻の部分から採れるコードバン
表面はキメ細やかで、使い込むうちに独特の艶がでてくるのが特徴です。

また、コードバンの耐久性は牛革の2~3倍とも言われており、美しさと耐久性を兼ね備えた革と言えます。
コードバンで作られた革靴は足なじみがよく、履き皺(シワ)がきれいに現れるのが特徴です。
 
 

豚革

 
豚革は、表面に三角形に並んだ毛穴の跡が見られるのが特徴です。
通気性が良いため、靴のアッパーよりも、裏革や中敷等にも多く使用されています。
豚革の裏面を起毛させたピッグスエードは、なめらかな手触りやあたたかみのある表情が特徴で、カジュアルシューズによく使用されています。
 
 

ワニ革

 
エキゾチックレザーの代表格であるワニ革。

凹凸のある独特のウロコ模様が特徴です。
特に、クロコダイル革は見た目の美しさと圧倒的な存在感から人気のある革です。

牛や馬、豚と比べると、天然にしろ養殖にしろ圧倒的に生息数が少ないために希少で、高級皮革に分類されます。

その独特な表面の模様を活かすために、ほとんど加工されないことも多いたことから、クロコダイルの革の靴はビジネスやフォーマルには不向きと言えそうです。

その上、お手入れを怠ると艶がなくなってしまったり、水濡れに弱かったりと何かと扱いが難しい革ではあるのですが…
それでも手に入れたいという人が多い、不思議な魅力がある革と言えます。
 
 

革靴に使われる革の加工方法

 
次に、革靴を選ぶときによく耳にする加工方法についてご紹介します。
革の加工は、革の見た目や質感から、取り扱い方法にも関わってきます。
 
 

スムースレザー

 
革靴だけでなく、皮革製品を選ぶときに一番耳にするのが、スムースレザーという言葉ではないでしょうか。

スムースレザーとは、その名の通り表面がなめらか(スムース)な革のことです。
そのため、スエードなどの起毛革や型押し革は含まれません。

スムースレザーとしては、銀付き革とガラス張り革の2種類が挙げられます。
  
 

銀付き革

 
革の表面(銀面)を活かした革のこと。表面にほとんど加工を施さない素上げ革や、染料仕上げの革などを指します。

革の表面をそのまま使用するので、キズやシワが多い革は使えないため、高級素材と言えます。

使い込むうちに表情が変化し、艶が出るといったエイジングを楽しむことができます。

その反面、色落ちや水濡れなどに弱いためデリケートです。

牛革では、カーフやキップなどによく使われる加工方法で、高級靴に多く使用されます。
 
 

ガラス張り革

 
ガラス革とも呼ばれます。
主に牛革をなめした後、表面が平滑なホーローや金属板に特殊な糊で貼り付けて乾燥させます。
さらに、そこから銀面(革の表面)を軽く取り除いて、塗料を塗って仕上げます。

ガラスバ張り革は表面が荒かったり、損傷が多い革でも綺麗に仕上げることが出来ます。
光沢があり塗装も施されているので、丈夫で汚れにも強いです。

その反面、経年によるエイジングは期待できません。
  
 

エナメル革

 
革の表面にエナメル塗装を施した革のことです。
パテントレザーとも呼ばれます。

塗装には、ウレタン樹脂などが使用されます。
表面を分厚くコーティングしているため、ある程度の防水性、耐久性を備えています。

光沢が美しいことから、フォーマル仕様や、女性用の靴に多く使用されます。
 
 

スエード

 
子牛や羊、豚などの小動物の革の、裏側(肉面)をサンドペーパーで磨いて起毛させた革です。
あたたかみがあり、柔らかな風合いが特徴で、カジュアルシューズや、ブーツ、スニーカーなどに使用されます。
 
 

ヌバック

 
スエードとは反対に、革の表面をサンドペーパーで軽く磨いて起毛させた革のことです。

スエードに比べると見た目が繊細で、毛足は短くきめ細かいです。

上品な見た目ですが、革に厚みがあるため丈夫です。
オイルを染み込ませて耐水性を持たせたオイルドヌバックは、アウトドア用シューズなどに使用されています。
 
 

シュリンクレザー

 
熱や薬品を用いて、革の表面を収縮(シュリンク)させて模様(シボ)を強調した革のことです。
こうすることで、表面のキズが目立ちにくくなり、柔らかくなります。

比較的カジュアルな靴に使用されることが多いです。
 
 

まとめ

 
革靴に使われる革の種類と加工方法についてご紹介しました。
耐久性や見た目の面では、やはり牛革と馬革が定番ですね。

特に牛革は、様々な加工方法で見た目や質感も変わり、ビジネスからフォーマル、カジュアルなど幅広い種類の靴に使用されています。

バッグや財布と同様に革靴を選ぶ際には素材や加工方法もチェックしてみてくださいね。

革手袋

革手袋に使われる革の種類と特徴!革を選ぶポイントとは?

冬のファッションに欠かせないのが手を暖かく覆ってくれる手袋です。

ウールやフリースなど色々な素材のものがありますが、今回は、革手袋についてご紹介したいと思います。
 
 

革手袋に求められる機能

 

手袋に使われる素材には、手の動きにあわせた柔軟性伸縮性通気性などが求められます。

というのも、手は人体の中でも複雑な動きをする部分。
さらには、汗もかくためです。

そして、そんな手袋の素材にぴったりなのが、革です。

革には伸縮性があり、使うほどに柔らかく、なじんでいきます。

また、革はもともと動物の皮膚なので、毛穴があります。
その毛穴から水分をある程度放出できるため、手に触れていても蒸れにくいといった特性があるのです。

古くから革が手袋の素材として利用されてきたのも納得できますね。

では、革手袋にはどのような種類の革が使われているのでしょうか。
 
 

革手袋に使われる革の種類

 
高級なものからカジュアルな見た目のものまで、手袋にはさまざまな動物の革が使用されています。
今回は、代表的なものをいくつかご紹介したいと思います。
 
 

ペッカリー革

 
イノシシに似たペッカリーという哺乳類から採れる革です。
表面には豚革に似た三角形の毛穴があります。

通気性が良く、吸湿性に優れていることや、軽くて柔らかく、手触りが良いことなどから、高級な手袋の素材として使用されます。

指先までしっとりなじむ手袋が出来上がります。
 
 

羊革


羊の革は、牛革などと比べるととても薄くて軽く、しなやかで柔らかいといった特徴があります。
生後1年以上飼育された羊の革をシープスキン、それより若い子羊の革をラムスキンといいます。

高級な手袋によく使用されるのは、ラムスキンです。
キメが細かく、すべらかでしっとりとした手触りが特徴で、伸縮性も高いです。

一方シープスキンは、フランス語ではムートンと呼ばれます。
毛皮を残したまま裏面をスエード加工したものがよく手袋に使用されています。
ほっこりとした見た目と吸い付くような手触りが特徴です。

毛皮を残しているのでしっかり防寒できます。
比較的カジュアルな見た目で、ミトンタイプも多いです。
 
 

鹿革(ディアスキン)

 
ディアススキンは、メスの鹿から作られた革です。
繊維が非常に細かいのでなめらかな質感を持ちつつも、とても丈夫な素材です。

吸湿性と通気性が良いため、蒸れにくいのも特徴。
日本では古くから足袋や武具などに鹿革が利用されてきました。
他の皮革に比べると水に強い特性があるため、雨天時にも使用しやすいです。
 
 

山羊(やぎ)革 

 
山羊革は薄くて柔らかく、表面には美しいシボがあるのが特徴です。
摩擦に強く丈夫なため、バイクやスキーなど、動作に負担がかかるようなスポーツ用の手袋にも使用されます。

薄くても強度があり、使うほどに身体になじみ、型崩れしにくいといった特性から、手袋だけでなく、衣類にもよく使用されています。
 
 

豚革

 
豚革は、表面に三角形に開いた毛穴が特徴です。
通気性が良く、摩擦に強く耐久性のある素材のため、湿気のこもりやすい手袋や靴の中敷などに使用されています。
手袋には、革の裏側を起毛させたピッグスエードがよく使用されます。
 
 

牛革

 
牛革は皮革の中で最もポピュラーな素材です。
羊革や山羊革などと比較すると厚みがありますが、やわらかくなめして手袋にも多く使用されます。

カーフスキンやカウハイドなど、牛革の中でも比較的薄手でやわらかいものはファッション性の高い手袋に使用されます。
キメが細かくなめらかな表面を持ちながらも、耐久性のある手袋に仕上がります。

一方でステアハイドなど厚みのあるしっかりとした革は、アウトドアや作業用手袋、野球グローブなどに使用されることが多いです。
 
 

革手袋を選ぶ際のポイント

 
手袋には、ペッカリー、羊革、鹿革などさまざまな動物の革が使われていますね。
次は、革手袋を選ぶ際のポイントについて少しみていきましょう。
 
 

手袋のサイズ

 
革手袋を選ぶ際には、見た目や肌触りだけでなく、サイズ選びも重要です。

革は伸びるという性質があるため、少しきついと思うくらいのサイズを選ぶのが肝心。
使っていくうちに徐々に手になじんでぴったりのサイズになっていきます。

きれいにフィットした革手袋は、寒さを防いでくれますし、見た目にも格好良いです。
 
 

手袋の縫製(ほうせい)

 
革手袋の縫製も選ぶ際のポイントです。
革手袋の縫製には、縫い目が外側に出ているものと、出ていないものがあります。

厚みのある革には、縫い目が外に出る外縫いが適していて、堅牢な見た目になります。
一方女性用の手袋や薄手の革には縫い目が外に出ない内縫いが多くなります。
こちらは、すっきりと洗練された印象の手袋に仕上がります。

ご自身の好みや使用する場面に応じて選んでみてくださいね。
 
 

まとめ

 
今回は、革手袋に使用される革の種類と特徴、革手袋を選ぶ際のポイントについてご紹介しました。
見た目や肌触り、デザインなど、使われる革によって出来上がる手袋の印象は違ってきますね。
縫製もデザインの一部というところも革素材の特徴と言えそうです。

使うほどに手になじんでいく革手袋。
選ぶ際にはぜひ今回の記事を参考にしてみてくださいね。 

革 染め方

革の色の染め方を紹介!染料仕上げと顔料仕上げの違いとは?

ブラック、ブラウン、キャメル・・・みなさんが普段目にする革製品には、様々な色が施されていますよね。 実は、革という素材は、その着色方法によっても仕上がりに違いが生まれます。 現在、革の色に関する仕上げ方法には、染料仕上げと顔料仕上げの2つの種類があります。 今回は、この2つの方法の違いと、それぞれで着色された革の特徴についてご紹介したいと思います。    

 

染料仕上げと顔料仕上げ それぞれの意味

 

まずは、染料仕上げと顔料仕上げ、それぞれの意味やメリット、デメリットについて見ていきましょう。

 

染料仕上げとは?

 

 

染料仕上げは、染料を使用して革の繊維を染めあげる方法です。 アニリン染料を使用することから、アニリン仕上げと呼ぶこともあります。 透明感のある薄い膜で表面を覆うため、革が本来持つ表情(しわ、キズなど)が楽しめます。 カーフ(生後6ヶ月くらいまでの子牛皮)など、キズの少ない高級革には、染料仕上げが多いです。    

 

染料仕上げのメリット

 

  キズやシワ、チスジといった革独特の自然な表情が見え、使い込むと色や艶が変化しやすく、革らしさを楽しめる仕上がりになっています。 爪などでひっかいて傷が付いても、使用するうちに目立たなくなります。    

 

染料仕上げのデメリット

 

  本革らしさを楽しめますが、取り扱いには注意が必要です。 耐水性は低く、水や汗でしみになってしまうこともあります。 また、洋服などにすれると色落ちもしやすいのも難点です。    

 

顔料仕上げとは?

 

 

顔料仕上げは、顔料を使用して皮革の表面にペンキを塗るように色を着ける方法です。 キズなどが目立つ革によく使用される方法です。 顔料仕上げの革で作られた製品は、購入時のきれいな状態を長く保つことができるため、女性用の鞄などに多く使われています。    

 

顔料仕上げのメリット

 

  染料仕上げと比べると、塗膜が分厚いためキズやシワといった革の特徴は覆い隠されます。鮮やかな色味が出やすく、均一的できれいな表面に仕上がります。ある程度撥水性もあり、キズなども付きにくく、ほとんど色落ちしません。    

 

顔料仕上げのデメリット

 

  きれいな表面や色味が長続きしますが、革特有の表情を隠してしまうため、革らしさは幾分損なわれます。上に塗った顔料に隠されるため、経年変化は見えにくいです。    

 

染料仕上げと顔料仕上げ どちらを選ぶべき?

 

  結論から言うと、革製品に何を求めるのかによって、どちらの染め方の革が適しているのかが決まってきます。

『使い続けるほどに美しい風合いを醸し出す』という革製品の醍醐味を楽しむなら、染料仕上げの革が適しているでしょう。

ただし、キズやシワといった革本来の表情や、革を育てる感覚を楽しめる分、しみや色落ちなども起こりやすく、取り扱いには少し注意が必要です。

一方で、きれいな色味や新品の状態を長く楽しむなら顔料仕上げの革が適していますが、革独特の経年変化はあまり期待できません。

求める革製品の雰囲気や、見た目、使い方などを踏まえて、それに適した染め方の革を選ぶことが大切です。

 

Tanner’s Memo

近年、中国など世界の国々で革製品の消費が高まっていることから、海外・国内ともに、状態の良い原皮の流通量は年々少なくなってきています。

革本来の風合いを活かせる染料仕上げには、状態の良い原皮が必要不可欠です。

そのため、染色仕上げの革の希少価値はますます高まっています。

もちろん、製品によっては顔料仕上げの革が最適な場合もありますので、一概にどちらが良いと決めることはできません。

染料仕上げと顔料仕上げ、それぞれをうまく組み合わせることで、お客様が求める革の風合いや色味を表現すること。

それも私たちタンナーの役割です。

 

まとめ

今回は、革の染料仕上げと顔料仕上げについて、それぞれの革の特徴をご紹介しました。

基本的に、革製品は長く使うことが多いもの。

決してどちらの染め方が良いというわけではなく、求めるイメージに合った染め方の革を選ぶことが、長く革製品を楽しむコツなのかもしれません。

もし次に革製品を選ぶ時には、ぜひ革の着色方法にも注目してみてくださいね。

革のお手入れ方法

革のお手入れ方法をご紹介!革を長持ちさせるためにやるべきことは?

お気に入りの革製品はできるだけ長く使い続けたいものですよね。

加工の方法にもよりますが、革はお手入れをせずにそのままにしておくと湿気でカビが生えたり、乾燥してカサカサになったりします。

そうならないためには、定期的なお手入れが必要です。

革はお手入れすることで、良い状態で長く使い続けられます。

今回は、革製品のお手入れ方法と、水に濡れてしまった場合などの対処法についてご紹介します。

まずは、基本的なお手入れ方法からみていきましょう。
 
 

革のお手入れ方法

 
革のお手入れは、思っているよりも簡単です。

一般的な革のお手入れ手順をご紹介します。

頻度は、1~2ヶ月に1回程度でOKです。
革がカサカサしてきたなと思ったらお手入れしましょう。

使うものは、ブラシ、革用のオイル、布です。ブラシは天然毛の豚毛や馬毛のものが良いです。
布も、綿などの天然素材のものを用意しましょう。
 
 

革のお手入れ手順

 

1 汚れをおとす

 
ブラシを使って、表面についたほこりを取り除きます。
力を入れずに、なでるように優しくブラッシングしましょう。
 
 

2 革用のオイルを塗る

 
乾いた布にオイルを少量とり、すばやくなじませます。
オイルをつけ過ぎるとシミになってしまいますので、不安な場合は、目立たない場所で試してから、全体に塗るとやりやすいです。

うすく、手早く塗るのがコツです。

オイルを塗ることで、革に潤いを取り戻します。
 
 

3 乾拭きする

 
革にオイルが染み込むまで待った後、全体をやさしく乾拭きします。
余分なオイルをふき取ると、艶がでてきます。

この3ステップで基本的なお手入れは終了です。
思っていたよりも簡単だったのではないでしょうか。

革靴やバッグなど、水濡れが気になる場合は最後に防水スプレーを振ると良いです。
次に、汚れがついてしまったり、水に濡れてしまった場合の対処法をご紹介します。
 
 

革が水に濡れてしまった場合

 
突然の雨などで革が濡れてしまった場合、そのままにしておくと水染みが残ることがあります。
水が浸み込んでしまう前のケアが大切です。
 
 

1 水拭きする

 
水を絞ったタオルや布巾などで、全体を水拭きします。
水染みが見えなくなるくらいに水をなじませると、乾いたときに水染みが目立たなくなります。
 
 

2 革を乾燥させる

 
水拭きしたあと、乾いた布でたたくようにして水気を取り除きます。
この時、強くこすると色落ちする恐れがありますので注意しましょう。

その後、形を整えて、風通しの良い日陰で自然乾燥させます。
ドライヤーなどで熱をあてて乾かすと、ひび割れや痛みの原因になりますので、使用しないようにしましょう。


水に濡れた状態の革は、色落ちや変形しやすいので、特に取り扱いに注意が必要です。
乾燥させた後は、革のオイルが抜けて革表面がカサつくことがあるのでオイルを補給してあげましょう。
 
 

革が汚れたり、キズがついた場合の対処法

 
革の表面に薄く付いた汚れは、消しゴムで軽くこすると落ちます。
こすりすぎると色落ちしてしまいますので、力加減に注意しましょう。

軽くひっかいたり、こすったりしたキズは、水拭きすると目立たなくなります。

水濡れの対処法と同じように、キズのある場所を軽く水拭きした後、自然乾燥させましょう。

汚れもキズも、軽いものであればこれらの方法で目立たなくなります。
ですが、革の中まで染み込んでしまった汚れや、深いキズは残念ながら消すことができません。
 
 

まとめ

 
今回は、革製品の基本的なお手入れ方法と、水濡れなどの対処法についてご紹介しました。

革製品を使っていると、多少の水濡れや汚れ、キズは避けられないものです。
どれも完全に消すことは難しいですが、それも革素材の特徴です。

革のお手入れは少し手間かもしれませんが、手をかけた分愛着がわいてきますよね。
お手持ちの革製品を長く使い続けるために、是非参考にしてみてくださいね。

野球グローブ 素上げ革

野球グローブ用の革の特徴とは?ほとんどが素上げレザーの理由

野球グローブは、プレーヤーである野球選手にとって生命線と言ってもいいくらい重要なアイテムですよね。

同じ野球用具でも、バットやスパイクはよく買い替えても、グローブは長期間使用しているという人は多いと思います。

それはやはり、野球グローブには使い込むほどに色や形が仕上がっていく『本革』という素材が使われていることが大きな要因と言えそうです。

では、そんな野球グローブに採用されている革には、一体どのような種類や特徴があるのでしょうか?

今回は野球グローブの革について、取り上げてみたいと思います。
 
 

野球グローブに求められる機能とは?

 
野球グローブ用の革の説明に入る前に、そもそもグローブに求められる機能から見ていきましょう。

一般に野球グローブには次の3つの機能が求められます。

・耐久性
・弾力性
・柔軟性

一つずつ見ていきましょう。
 
 

耐久性

 
まず第一に、野球グローブには、何千回、何万回という捕球に耐えられることはもちろん、ダイビングキャッチなどの激しいプレーにも耐えられる強さが求められます。

そこには、もちろんプレーヤーの手を保護する意味もあります。
 
 

弾力性

 
野球グローブの役割は一言で言えば『捕球』です。

プレーヤーは、時速100kmを優に超えるスピンの効いたボールも、ボテボテの当たりのボールも正確に素早く捕球する必要があります。

そのため、野球グローブにはまずボールの回転や勢いを吸収する弾力性が求められます。
 
 

柔軟性

 
野球で守備の動きを表現する時に、「グローブ捌(さば)き」という言葉が使われるように、プレーヤーは野球グローブを自分の体の一部のように、スムーズに操ることが求められます。

柔らかくしなやかで、プレーヤーの複雑な手の動きの邪魔をせず、違和感なくフィットする。

野球グローブにはそんな柔軟性が求められていると言えるでしょう。


では、これら3つの機能を満たすために、野球グローブの革にはどのような種類のものが使われているのでしょうか?

次に野球グローブに使われる革の種類や特徴について見ていきましょう。
 
 

野球グローブに使われる革の種類や特徴とは?

 野球グローブ 皮
一般的に本革には牛や、豚、馬など様々な動物の皮が原皮として用いられますが、野球グローブに使われているものの99%は牛革(カウレザー)です。

牛革が使われている理由としては、まず、他の動物に比べ皮膚線維組織が比較的均一で丈夫なこと。
次に、生育年数や雌雄などによって、柔らかさ、厚みに違いがあるため、様々な性質の革を作れることの2点が挙げられます。
 
 

主に野球グローブに使われる2種類の牛原皮

 
牛革の素材となる原皮のうち、主に野球グローブに使われるものはキップとステアハイドがほとんどです。それぞれの原皮には次のような特徴があります。
 
 

キップ

 
生後6ヶ月~2年程度の中牛から採れる皮のこと。皮の繊維密度が高く、薄いですが丈夫です。成牛皮に比べると銀面(表面)はなめらかで柔らかいです。
 
 

ステアハイド

 
生後2年程度で、3~6ヶ月の間に去勢されたオスの成牛から採れる皮のこと。キップには劣りますが、銀面(表面)はきめ細やかです。厚みが均等で丈夫なことも特徴です。

キップ、ステアハイドに共通する、「適度な厚みがあり丈夫」、「銀面(表面)がなめらかで手触りが良い」という性質。

これらは、野球グローブに求められる弾力性・耐久性・柔軟性の機能にピッタリ当てはまるものです。

さらにつけ加えると、キップは原皮の中でも高級な素材にあたり、見た目や、タッチ感が良くて、軽いことからプロ選手用の野球グローブとして使われることが多いです。

そのため、一般に手に入る野球グローブの大半はステアハイドになると言えそうです。

では、次に野球グローブの革の特徴について見ていきましょう。
 
 

野球グローブのほとんどは『半芯通し』

 
野球グローブの革の大きな特徴としては、”半芯通し”という染め方を採用している点が挙げられます。

次の写真をご覧ください。

赤丸で囲ってある部分ですが、中央が白くなっていることが確認できます。

これは染色仕上げの一つ、「半芯通し」という染色方法をとっているためです。

野球のグローブは、捕球時にボールの勢いをしっかり止める(摩擦係数の減少を防ぐ)ため、銀面(表面)に塗料や塗膜を行わないことが一般的です。

そのため、革の表面に直接塗料を塗る顔料仕上げではなく、染料を使って革を繊維から染めあげる染料仕上げという染色方法が実施されています。

ただし、革の芯(中心)まで染料を入れてしまうと、芯の繊維がほぐれ、野球グローブに求められる弾力性や耐久性を損なってしまいます。

そこで「半芯通し」という方法がとられるようになったのです。

もちろん、硬式グローブほどの弾力性や耐久性を求められない軟式グローブでは、中心部まで染め上げた「芯通し」を採用しているグローブにも多く見られます。

とはいえ、多くの野球グローブでは半芯通しが採用されていることからも、

半芯通し=野球グローブの革

と言っても差し支えないでしょう。

そして、この半芯通しで染色した革の良さを最大限に引き出すのが”素上げ”と呼ばれる仕上げなのです。
 
 

素上げ革が野球グローブの魅力を生む

 野球グローブ半芯通し(全体)
素上げ革とは、染色した後の革に、着色剤や仕上げ剤などの薬品をほとんど使用しないことで、革独特の表情を残した革のことを指します。

本来、天然素材である本革には、動物が生きた証であるキズやシワが残るもの。

そのため、着色剤や仕上げ剤を使用して表面のキズやシワを隠したり、革の色落ちを防いだりすることが一般的です。

そうすることによって革が強く長持ちするように感じるかもしれませんが、塗料や塗膜などで革の表面を覆ってしまうと、革本来が持つ自然な風合いは損なわれてしまいます。

これは、野球グローブに求められる弾力性や柔軟性を減少させる原因にもなるのです。

もちろん、素上げの革にも弱点はあります。
表面に分厚いコーティングを施さないため、色落ちや、シミになりやすいのです。

ただし、その弱点も、野球グローブにおいては、グローブ用のオイルが馴染みやすいという利点に早変わりします。

野球グローブの、使い込むほどに深まる色味や艶、手に馴染んでいく感覚。

そして、自分だけのグローブに育てていく醍醐味は、実は素上げの革によって生み出されているものなのです。
 
 

まとめ

 
ここまで見てきた通り、野球グローブ用の革は半芯通しなど他の製品にはない仕様が求められます。

そのため、グローブ用の革はどのタンナーでも生産しているというわけではありません。

特に大手の野球グローブメーカーの厳しい目にかなうグローブ用の革を提供しているのは、
国内でもごくわずか(大体5~6社ほど)と言われています。

ありがたいことに、現在のところ、私たちごとう製革所はその数少ない1社に数えていただいています。

といっても、何か特別なことを行っているわけではなく、

強く、しなやかで、プレーヤーの手に馴染む。

そんな野球グローブを実現する革づくりに、真っ直ぐに取り組み続けてきた結果と受け止めています。

私たちはこれからも現状に甘んじることなく、お客様のため、そして、日本のモノづくりのために挑戦を続けていきます。